学文館医学生理学研究所

ホーム > 上武大学医学生理学研究所/研究・活動報告

研究・活動報告

2020/04/20

 

産婦人科がんのひとつ“絨毛上皮腫”に対する
新規治療法開発のお知らせ

 

学校法人 学文館 上武大学(学長:澁谷正史、以下「上武大学」)は、この度、産婦人科領域のがんのひとつ“絨毛上皮腫“に対する新しい治療法の候補を見出しましたので、お知らせいたします。

 

  • ●がんの悪性化(増殖・転移)には、血管新生が重要であることが世界的に認識されています。

 

  • ●主要な血管新生因子VEGFに対する中和抗体アバスチンが開発され、多くの固形がんで利用されています。
  •  

  • ●絨毛上皮腫は胎盤の栄養膜細胞のがん化によることが多い、産婦人科がんのひとつです(まれに、男性にも発症します)。

 

  • ●栄養膜細胞は、図に示すように、アバスチンによく似たVEGF阻害タンパクsFlt-1を、本来、多く産生する細胞です。なぜ悪性のがんになることがあるのでしょうか。
  •  

  • ●本学研究所の解析結果:調べた全ての絨毛上皮腫(3細胞株、1腫瘍組織:東大産婦人科との共同研究)で、sFlt-1をつくる遺伝子(Flt-1遺伝子)の働きが、「DNAメチル化」により強く抑えられていることが明らかとなりました。

 

  • ●脱メチル化薬剤により、絨毛上皮腫のsFlt-1発現が大きく回復すること、sFlt-1を人為的に発現させた腫瘍では、動物個体(マウス)の実験でがんの増殖が著しく抑えられることが示されました。
  •  

  • ●今後、悪性の絨毛上皮腫に対する治療薬として、脱メチル化剤(すでに一部のがんでは承認)を加えることが、悪性化を防ぐ有効な手段となると考えられます。(本年2月に、群馬大学、東京大学と共同で原著論文を国際学術誌BMC Cancer に発表しました (Sasagawa et al. 2020.2.)。

以上

 


※1:絨毛上皮腫
主に、胎盤栄養膜細胞から発生するがん。

※2:VEGF
vascular endothelial growth factor。血管内皮細胞増殖因子で血管内皮細胞表面の受容体(VEGF Receptor Flt-1や、KDR)と結合することにより血管内皮細胞を増殖させ血管形成を促す。

※3:sFlt-1
soluble fms-like tyrosine kinase-1。VEGF受容体1(VEGFR1/Flt-1)の一部が遊離したもの。Flt-1遺伝子は澁谷学長が1990年に東大医科研において発見し、世界に報告した新規遺伝子。



 

 

トップへ戻る