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研究・活動報告

2023/8/4

 

「林泰秀客員教授と群馬大学は共同で小児白血病の解析を行い、

遺伝子異常と白血病との関連を明らかにして論文発表しました。」  

 

  1. 説明文:

    小児急性骨髄性白血病(AML)の長期生存率はいまだ60?70%程度であり、治療成績の向上が望まれる小児癌である。林客員教授と群馬大学は共同でAMLの臨床検体を用いた解析を行い、がん抑制遺伝子として知られるTP53及びRB1に生じた遺伝子異常を同定し、その分子生物学的及び臨床的意義を明らかにして論文発表した。
    日本小児白血病リンパ腫研究グループAML-05臨床試験に登録された328症例を対象にサンガーシーケンス法と次世代シーケンサーを用い、癌関連遺伝子の網羅的な解析を行った。TP53及びRB1遺伝子異常はそれぞれ2.1%、1.8%の症例で検出された。いずれかの遺伝子異常を有する症例の予後は統計学的に有意に予後不良であった。また、これらの遺伝子異常を有する症例ではSLC2A5KCNAB2、及びCD300F遺伝子が高発現しており、これらの遺伝子が高発現している症例はTP53RB1遺伝子異常の有無に関わらず予後不良であった。本研究で得た知見がAMLの治療成績向上に寄与することが期待される。

    Hara Y, Shiba N, Yoshida K, Yamato G, Kaburagi T, Shiraishi Y, Ohki K, Shiozawa Y, Kawamura M, Kawasaki H, Sotomatsu M, Takizawa T, Matsuo H, Shimada A, Kiyokawa N, Tomizawa D, Taga T, Ito E, Horibe K, Miyano S, Adachi S, Taki T, Ogawa S, Hayashi Y. TP53 and RB1 alterations characterize poor prognostic subgroups in pediatric acute myeloid leukemia. Genes Chromosomes Cancer. 2023 Jul;62(7):412-422. doi: 10.1002/gcc.23147. Epub 2023 Apr 27. PMID: 37102302.

     

    図1. TP53及びRB1遺伝子異常と他の遺伝子異常との関連

TP53遺伝子異常を有する症例ではCDKN2A/2B遺伝子とPRPF8遺伝子の欠失を高頻度に合併し、染色体分析では7例中6例が複雑核型を有していた。RB1遺伝子異常を有する症例ではELF1遺伝子異常を6例中5例が合併し、またTP53と異なり複雑核型は1例のみであった。